3年間の積み重ねと、今年の新しさ
これまでの歩みと、今回特に力を入れたこと
小室:この取り組みは2023年12月に初めてアプリベースのXRを活用したイルミネーションイベントとして始まり、今回で3年目・4回目の開催となります。毎回「リアルとデジタルの融合」をテーマに挑戦を重ねてきましたが、今年は、「ただ並存させる」のではなく、真に「融合・連動する」体験を作ることに集中しました。光・音・スマートフォンの振動というリアルの演出とXRのデジタルを軸に、さらに2025年の新機軸として音響XRとAIキャラクター「ミナモン」を加えています。
AIキャラクター「ミナモン」
井関:私が全体演出として大切にしたのは、「この街だからこそ成立するストーリー」という視点です。港南エリアの歴史や空気感、使われる建物や広場の特性を読み込みながら、場所ごとに体験を設計しました。2025年は要素が増えた分、それぞれの演出がひとつの世界観に収まるよう、全体の文脈を保つことに気を配りました。特に意識したのは、街中で行う体験であることです。わざわざ目的を持って訪れる人だけでなく、通勤途中の人や近隣に住む方が「何かやっている」「見てみたら楽しい」と自然に入り込めるようにしたかった。そのために、各スポットの場所ごとの特徴と、全体を通したストーリーの両方を意識して演出を設計しました。
多様なチームが、ひとつの体験をつくるまで
体制と各チームの役割
小室:NTTアーバンソリューションズが主催として全体の制作・運営管理を担い、NTT ExCパートナーとNTTソノリティが共催として加わっています。演出面では、全体クリエイティブをREDの井関さん、照明演出をプリズムの荒川さん、XRアプリとAIキャラクターをTHRUSTER、音響XRの技術をNTTコンピュータ&データサイエンス研究所がそれぞれ担いました。さらに街中での実施においては、NTTアーバンソリューションズグループの関連物件である品川シーズンテラスを舞台としたほか、NTT、NTTデータ、コクヨなど各社にご協力いただき、港区にも後援としてお力添えいただいています。
多様なチームが連動する制作プロセスを教えてください
井関:まず全体のタイムラインと演出の方向性を映像コンテ(Vコンテ)にまとめ、各チームに共有するところから始まりました。照明の荒川さんたちとは、色味や変化のタイミングをキャッチボールしながら決め、アプリ開発のTHRUSTERさんとはXRコンテンツの動きと照明・音楽の同期を細かく詰めていきました。最終的には現地で全員が一緒に見て、実際のイルミネーションとXRが重なった状態を確認してから調整を加えています。
荒川:照明は、デジタルの演出とシンクロさせることが今回最大のテーマでした。NTT品川TWINSの広場では、人の動きに反応してLEDがインタラクティブに変化するセンサーを社内で開発し、13種類の動きパターンを作った上で、現地で4種類に絞り込みました。水色・マゼンタ・深いブルーというベイエリアを意識した配色も、3Dシミュレーションで確認しながら細部まで作り込んでいます。
また、XRとリアルな照明との融和を大事にしました。LEDのゲートとオブジェを設置して体験性を高めたり、ムービングライトを入れて壁面を演出したりするなど、他のイルミネーションとの差異化を意識しました。加えて、センサーを使いたいということで、社内の若手エンジニアと試行錯誤して生まれたインタラクションも取り入れています。
日中は日常の通勤風景ですが、それが夜になると急に雰囲気が変わる、という演出をどう実現するかという部分を一番考えました。
山内:デジタルとリアルの融合は、前年の2024年もやらせていただいていますが、2025年はより親密にコラボしようというところで、品川港南が一段とデジタルと溶け合うような街のように見せていく工夫をしました。例えば、ミナモンはアプリ上だけでなく、XRコンテンツ内にも登場させ、コンテンツとリアルな演出については、照明・音楽・アプリの演出が時刻同期で連動するようにしました。VPS(ビジュアルポジショニングシステム)も前年よりさらに精度を上げ、街にカメラをかざすだけで没入感のあるXRが出現し、歩き回っても映像がずれることなく街に存在し続けるものとしています。
音響XRが生み出す、新しい没入体験
大きな新機軸である音響XR
加古:音響XRは、NTTが研究開発を進める現実の空間の音とデジタルの音を融合させる技術です。今回使用したNTTソノリティの耳を塞がないイヤホン「nwm ONE(ヌーム ワン)」をつけると、会場のスピーカーから流れる音楽に加えて、ミナモンが頭上から語りかけてきたり、楽器が頭の上をぐるぐると旋回するような感覚が生まれます。イヤホンから鳴っているのか外のスピーカーから鳴っているのかわからなくなる──そんな不思議な聴覚体験です。
久保田:NTT ExCパートナーは音響コンテンツの制作と立体音響の配置設計を担当しました。音を立体的に感じるには前後左右上下の音響特性を緻密に設計する必要があります。さらに今回は日本人の平均的な頭の形や耳の特性に最適化した立体音響を採用し、大・中・小のサイズを用意することで、大人からお子様まで同じ臨場感を届けられるようにしました。
清野:「nwm ONE」は耳を塞がないので、外の音も人との会話も楽しみながら、自分だけに届くパーソナルな音を同時に体験できます。友人や家族と並んで同じ場所に立ちながら、それぞれ異なる体験ができる──それがこのデバイスならではの価値です。
XRコンテンツと音響XRが重なり
没入感のある世界観を演出
(品川シーズンテラス アトリウム)
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