舟運×次世代モビリティで、品川港南を東京ベイの玄関口へ
今回の「マルチモーダル&マルチスケールなモビリティハブの実証」の狙いについて教えてください
大國:品川港南エリアは、新幹線や空港路線などが接続する国内有数の交通の要衝で、将来的にはリニア中央新幹線の開通も見込まれるなど、今後さらに交通結節点としての機能が高まることが期待されています。一方で、駅を降りたあとの移動の選択肢が少ないこと、そして隣接エリアへ向かう導線として運河沿い空間を十分に活かしきれていないことが課題でした。
そこで今年(2025年)は、品川港南をベイエリアの玄関口として街一体で機能を高めることを目的に、品川港南エリアに2か所のモビリティハブと1か所のモビリティポートを設置。利用者が好みに応じて選べる次世代モビリティを複数用意し、東京ベイエリアのイベントとつなぐことで、回遊の需要や課題、解決策を検証しました。
久保田:もう一つのポイントが「マルチスケール」です。品川港南という「狭域」、品川・天王洲・お台場からなる「中域」、そして新幹線・空港・将来のリニア等でつながる「広域」、この異なるスケールの移動手段の連動性を高めることで、品川港南を起点としたハブ機能の形成をめざしました。
品川港南〜天王洲〜お台場の回遊イメージ
(全体マップ)
2025年はなぜ「複数モビリティ」と「舟運との接続」に着目したのですか?
大國:2024年度は、舟運を軸に、品川と周辺(天王洲・お台場)をつなぐことで回遊性を高めることに挑戦しました。ただ、品川港南エリアを起点にエリアの回遊性を高めるには、水辺(舟運)だけでなく、さらに選択肢を増やし、陸(駅前〜目的地)の体験価値も同時に上げる必要があると考えました。
具体的には、品川駅港南口〜天王洲の陸路で、歩道用・車道用のモビリティを組み合わせて移動体験を設計し、舟運側の体験とも接続することで、「移動そのものが目的になる導線づくり」を狙っています。
■品川港南エリアに設置されたモビリティハブ

マイクロモビリティ乗車受付
(品川駅港南口「こうなん星の公園」)
マイクロモビリティ乗り換えポート
(港南公園A)
乗船受付
(天王洲)
久保田:今回のイベント全体としても、品川⇆天王洲の「NEW MOBILITY」と、天王洲⇆お台場周辺の「ART & CRUISE」を組み合わせ、東京湾を舞台に舟運・モビリティ・アートを体験融合させる構成でした。「点」の施策ではなく、「面」で回遊が生まれる状態を、実証として見える化したいと思いました。またそのために、品川駅港南口~天王洲の陸路では、中距離用・短距離用・一人乗りから複数乗りまで、9種類計35台の多様なモビリティを用意しました。
参加者の反応や、本実証の結果・成果はいかがでしたか?
久保田:今回の利用者は3日間(10月11日~10月13日)と限られた期間ではありましたが、陸上と舟運を合わせて約770名と非常に多くの方に体験いただきました。アンケートでは、満足度が「満足・非常に満足」計88.0%と高く、参加目的の85.2%が「モビリティの乗車体験」でした。さらに、今後も品川〜天王洲アイル間で次世代のマイクロモビリティを使いたいという意向が81.1%、駅前や公園にモビリティハブがあることへの肯定的反応が93.1%と、将来の定着の可能性を示す結果も得られました。
また、品川・天王洲・お台場を発着とする、多様な移動パターンやモビリティの選択の傾向が確認でき、回遊が生まれる設計を、実証として一定の可視化ができたことは大きな成果でした。
社会実装を見据えたとき、今回の実証で把握できた課題は何でしょうか?
大國:満足度は高い一方で、社会実装を行うためには、運行の安定性(天候対応含む)や、体験導線の分かりやすい設計、しっかりとした安全対策と運用コスト、平時の需要の確認など、クリアすべき論点はまだまだたくさんあります。料金体系についても、非日常の体験としては良いが日常的な導入は条件次第といった声もあり、どういった体験設計・ユースケース設計をするのかが重要だと考えています。
モビリティをご提供いただいた3社様より、本実証実験に対する想いをお寄せいただきました。
■合同会社Limot 様
今回のイベントで改めて気づかされたことは「すべてのヒトに移動の自由を提供する」ことの重要性です。当社は全国26エリアでモビリティ事業を展開しておりますが、利用者の年齢や利用形態、利用目的によってニーズは大きく異なります。そのすべてのニーズを満たすために、多様な選択肢を提供し、街の回遊性を向上させることが当社の使命だと改めて実感しました。また、野心的な目標としては、観光や防災といった付加価値を付与することで、モビリティハブをその街になくてはならない機能の一つとして根付かせたいです。
■株式会社ドコモ・バイクシェア 様
今回のイベントでは、2025年4月から広島で初の実証実験を行った新型電動モビリティ(特定小型原動機付自転車)を、実験的に導入しました。このモビリティは自転車のような形状で停車時・発進時のふらつきや転倒リスクが小さく、乗り心地も快適であることが特徴です。アンケート結果では、約93%の方に乗車体験に満足いただきました。「自転車のように漕がなくて良いので楽だった」「操作が簡単だった」「風を感じられて楽しかった」というお声をいただき、今後も利用したいという意向を確認できました。既存のドコモ・バイクシェア(電動アシスト付き自転車シェアリング事業)に、今回の新型電動モビリティも加え、今後もモビリティハブをはじめとしたまちづくり・交通の利便性向上や課題解決に貢献していきたいと考えています。
■本田技研工業株式会社 様
モビリティハブを通じて、品川の街中で多種多様なモビリティを実際に有償の移動手段としてご利用いただきました。その結果、実際の利用シーンに即した具体的なユーザーニーズや利用傾向を把握することができました。また、街中での移動体験を通じて、モビリティの利便性や課題についても多くの示唆を得ることができました。今後は今回の実証で得られた知見を活かし、スマートシティの中でより活用しやすいモビリティの実現をめざしていきたいと考えています。
ご協力いただきましたLimot様、ドコモ・バイクシェア様、本田技研工業株式会社様、ありがとうございました。