01まちの価値を高める「Urban Park Life HIROSHIMA構想」
お話を伺った方
株式会社
中国四国博報堂
鈴木 肇
NTT都市開発株式会社
中国支店
広島プロジェクト
推進室
部門長 岡本 篤佳
NTT都市開発株式会社
中国支店
川崎 巧大
住む人、働く人が魅力的に過ごせる新しいライフスタイル
「Urban Park Life HIROSHIMA構想」(以下UPL構想)について、具体的な内容を教えてください。
岡本:広島駅周辺地区と紙屋町・八丁堀地区を東西の核として持続的に活性化させる「ひろしま都心活性化プラン」を2017年3月に県と市が作成しています。これを受けて、我々が物件を所有する基町エリアの特徴を分かりやすく発信して、共感してくれる仲間が増えれば、新しいことが生み出せるのではと思いました。住んでいる人、働いている人が、どう魅力的に過ごせるか、それを誇らしく思えるかを見せたくて、ここでしかないライフスタイルをこのUPL構想に詰め込みました。
川が身近にあったり、芝生広場があったり、サンフレッチェ広島のホームスタジアムができたりと、都心なのに約43ヘクタールもの広大な公園の中にアート、スポーツ、自然に触れられる環境があり、県外出身者の私からすると素敵だと思いました。この構想を言葉では表現しづらいので、中国四国博報堂さんに依頼して魅力的な映像やパンフレットにしてもらいました。
どのような背景や課題意識からこの構想は生まれたのでしょうか。
岡本:東京、大阪の第1極、第2極都市に次いで、第3極の位置づけの都市群として、札仙広福(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)があり、人口減少時代にそれぞれの都市が持続的に発展していくためにさまざまな戦略をとっています。「ひろしま都心活性化プラン」を見て、都市間競争の中で広島の持つ特異性や優位性を引き上げるまちづくりを意識して構想を練りました。
「もっと、まちと、ひとつに」映像・ビジュアル制作に込めた思い
UPL構想を聞いた時の第一印象はいかがでしたか。
鈴木:私自身が広島都心に住居を構えて都心でライフスタイルを送る当事者でもある中で、UPL構想によって新しい価値がもたらされたと感じました。
動画・ビジュアル制作で意識されたことを教えてください。
鈴木:旧広島市民球場があった時代、基町は「まちに行こう」という一言に人々が心を躍らせ、家族や友人、仲間と共に過ごした特別な場所でした。今はライフスタイル中心の"まち"へと姿を変えようとしていることを伝えようと、さまざまな方のイメージの源泉になる動画・ビジュアル、それらが一体的なイメージとなるように心掛けました。そこで、アーバンパークライフという言葉だけでは一般の人に届きづらいと感じたため、生活者に寄り添った言葉で補足する必要があると思い、タグラインとなる「もっと、まちと、ひとつに」という言葉を開発して、その言葉を起点に制作を進めました。
「もっと、まちと、ひとつに」を全面に打ち出したパンフレット
岡本:そのタグラインは本当に心に刺さりました。基町という地名と「もっとまちへ」という二つの意味があり、昔みんなが使っていた「まちに行こう」という表現も組み込まれています。地域に根ざしている方だからこそ出てきた言葉でした。
制作上の工夫や難しさはありましたか。
鈴木:本構想が、インフラ整備だけをめざすのではなく、人中心のまちづくりであり「人とまちの再接続」をめざしているため、感情と社会的ビジョンを両立させて伝えることが難しく、こだわりのポイントでした。基町によって再び人の心が動いたり、踊ったりする様子を表現するには、説明的ではあっては伝わらないと考えました。そこで、実写の映像だけではなく、アニメーションを加えることで感情を豊かに表現しました。
美しい都市景観の中で多様な人が過ごすことも、働く人の時間も、子どもたちの笑顔も、一人の静かな余白も全て含めて、この「まち」でライフスタイルがある"歓び"がつながり合うように、まるでシームレスであるかのように描きました。
川崎:いろんな世代の人、いろんな背景を持った人がいろんな楽しみ方ができるということは、いろんな具体がそこにあるということです。例えばスポーツ好きなら、パブリックビューイングもSUPもあることで、アーバンパークライフをリアルに想像できます。よって、多様なシーンを入れる必要があり、制作時の調整にもその分苦労しました。
中でも一番目立つところにあるひろしまゲートパークやクレド基町の撮影許可を取る際にも、「NTT都市開発が手掛けているから」と快く受け入れる反応が多く、弊社の取り組みが地元に根付いている実感が持てました。美術館、ホテルなど多様な場所で撮影し、皆さまの協力があってこそ、この動画が成り立ちました。
官民連携でエリア全体をアップデート
広島のまちにおいて、UPL構想が担う役割とは。
鈴木:コンパクトシティと言われている広島のまちは、仕事やプライベートにおいて物理的な距離の近さを感じられますが、商業施設や公園が整理されて各エリアがシームレスにつながることで、さらに心理的な距離を近くに感じ取れる。UPL構想はそんな言葉だと思います。
岡本:広島は歴史的背景から戦後に建物が建築されており、今ここにきて一度に機能が古くなっている状況を迎えています。そのため、民間の力も借りながら、広島市としては徐々に建物や施設を更新している状況です。そういった状況に対しても、UPL構想が役割を果たしていると思います。
各事業との連携について教えてください。
岡本:広島県庁舎敷地有効活用事業においては、県庁舎敷地をUPL構想の中心的な価値である「アーバンパークライフ」を過ごせる象徴的空間にしたかったのです。中国地方各地から集まってきた人々が、広島バスセンターでバスを降りて最初に見える場所がこの敷地です。ひろしまゲートパークやひろしまスタジアムパークは建物を挟んでしまってすぐには見えません。だから、広域から集合してまず目に触れる県庁舎敷地を、芝生や木質の建物があって多様な人々でにぎわっているエリアにする。そうすることで、ここから見えない、その先のエリアも同様に、にぎわいが続いている印象を、他地域から来た方が抱いて、見て、各エリアを回遊してもらいたいという狙いがあります。
各事業者の集まりである広島市中央公園エリアマネジメント協議会に対しては、「当社のUPL構想に共感してくれたら一緒に取り組みませんか」というスタンスを取っています。同公園は基町エリアにあり、UPL構想ではこのエリアで得られるライフスタイルについて示しているため、回遊性を生み出すことやにぎわいづくりで連携しようとしています。
広島での暮らしを誇りに思えるように
今後の展望を聞かせてください。
川崎:「マルマルなまちだからカクカクな人が集まる」といった、まちが醸し出すある雰囲気に対して、ある特定の人たちが集積するという、まちと人には特有の関係性があります。基町は、30年前からおめかしして遊びに行く場所でした。マルマルなまちの準備が整ってきたので、体験できることを発信し続けて、市民の皆さまの選択肢の一つにしていきたいです。そして、いろいろな土壌が固まってきたところで、パセーラのリニューアルがUPL構想の大トリだと思っています。
岡本:大量消費の時代は終わり、それぞれの価値観でそれぞれの幸せがある時代。多様な選択肢を基町エリアで提供し、それぞれの家族の形に合う幸せを見つけられることが大切です。そして、広島にいることを誇らしく思ってもらいたいです。今回のように言語化・映像化できたことで、住んでいて良かったという気持ちが連鎖していけば、広島に人が戻り、幸せに過ごせると思います。
鈴木:UPL構想ではアーバンパークにライフが加わることで、広島の魅力も自分のライフスタイルの一つになっていきます。都心部に公共施設や商業施設、住居が集約されていく流れの中で、住居と働く場所が物理的に一体になることで、心理的にもまちへの思いが増していくと思います。誇らしく思えるようなまちに発展していく予感があり、基町エリアの未来が楽しみです。
02憩いの場所としてまちに溶け込む広島県庁舎敷地有効活用事業
お話を伺った方
広島県 総務局財産管理課
主査 松本 龍樹
株式会社SUEP.
主宰 末光 弘和
NTT都市開発株式会社
中国支店
広島プロジェクト
推進室
部門長 岡本 篤佳
NTT都市開発株式会社
中国支店
後藤 拓
県庁敷地を地域の活性化に役立てる
プロジェクトの背景を教えてください。
松本:広島県庁舎敷地有効活用事業は、昭和30年代に建てられ長年使用されてきた県庁舎の耐震化工事が進む中、庁舎を今後20年、30年と使い続けていくため、その敷地をいかに有効活用していくのか議論を始めました。県では、「広島県公共施設等マネジメント方策」を2021年11月に改定し、地域の活性化やまちづくりの視点を取り入れた機能提供や利活用への取り組みを掲げたことが背景にあります。周辺ではひろしまゲートパークやサッカースタジアム建設などの再開発が進んでおり、県庁敷地においても地域の活性化に資する場を創出する必要があると考えました。
岡本:事業内容を練るにあたり、我々は「広島市都市計画マスタープラン」や広島県と広島市が共同で策定した「ひろしま都心活性化プラン」を上位計画とし、紙屋町交差点周辺を「まちづくりの要」と捉えました。周辺のにぎわいが増す中で、憩いの場となること、また各エリアをつなぐ結節点となることをめざして、「MOTOMACHI CONNECT」という事業コンセプトを提案しました。
松本:県民の財産である県庁敷地の活用については、エビデンスに基づいて慎重に進める必要があり、基礎調査や民間事業者から広く意見や提案を聞くサウンディング型調査を経て、公募型プロポーザルによる事業者の募集を行いました。また事業を進めていくにあたっては、県庁の執務を止めずに整備を進めていく必要があること、また原爆投下後に建てられた庁舎のため、地中にはさまざまなものが残されている可能性があり、埋蔵文化財の調査や広島市の都市計画法に基づく制限の確認など、多方面との調整に時間を要しました。
取り組みの内容はどのようなものでしたか。
岡本:広島県庁舎敷地有効活用事業では、SUEP.(スープ)さんが全体のデザインと設計を手掛け、NTTアーバンバリューサポートと共同で運営管理を行っています。2024年4月に工事が着工し、25年1月に建物竣工を迎え、3月にグランドオープンしました。
施設には、広島県では初出店となるベーカリー「Merci life organics」、廿日市市発のスペシャリティコーヒー専門店「OMNIBUS ROASTERS MOTOMACHI HUB STATION」、そしてローソンとポプラのハイブリッド店舗「ローソン広島県庁前店」が出店しています。
広島県では初出店となるベーカリー
「Merci life organics」
廿日市市発のスペシャリティコーヒー専門店
「OMNIBUS ROASTERS MOTOMACHI HUB STATION」
松本:オープン以来、「県庁の森」や「もとはちこみち」では、職員や県民の皆さまが憩いの施設で商品を購入し、座って談笑されている様子をよく見かけます。これまでは職員や来庁者が通り過ぎるだけの場所でしたが、今では「ここで一息つこう」「職場の仲間や友人と話そう」「待ち合わせしよう」と思える場所になりました。
県庁とまちが一体開発を推進した理由は?
岡本:かつては県庁敷地を横切ることに心理的なハードルがあったと感じていましたが、交通拠点である広島バスセンターや、再開発が進む八丁堀エリアと県庁周辺をつなぎ、まち全体の回遊性向上をめざして「もとはちこみち」の整備を広島県と連携して実行しました。
松本:県民から見て県庁敷地と憩いの施設などのエリアが別々のコンセプトで全く異なる空間となることは好ましくないと考え、この憩いの空間全体がまちと一体的な景観になるように整備を進めました。
末光:開発にあたり工夫したのは、カフェや飲食施設を庁舎の建物の中に置くタイプの計画と異なり、道路側に面して県庁舎と少し距離を持たせて「入りにくさ」をなくし、まちとの一体感を保つ「距離感」を演出したことです。県庁の森側に寄せて森の中にあるような雰囲気を出すことで、都心部でありながら別世界のような憩いの空間にしました。この距離感のおかげで、自然と人が集まる場所になりました。
延焼防止建築物としての挑戦
この事業では、どのような特徴や工夫がありますか。
岡本:この建物の一番の特徴は、商業施設としては全国で初めて、防火地域において「延焼防止建築物」という木造建物が実現したことです。2019年の法改正により、一定の要件を満たせば防火地域でも木造建築が可能になったと末光さんから教えていただき、広島から全国初の事例を発信できるなら、とこの方法を採用しました。
末光:延焼防止建築物では、各面ごとの開口部の面積が制限されるというハードルがあります。通常の商業施設では、まちに開かれた大きな開口部が求められるため、これは大きな課題でした。そこで、既存の県庁舎の建物が上部にボリュームを持ち上げて下がピロティのような佇まいであったことに着想を得て、我々の建物もボリュームを少し浮かせて足元に開口部を作り、景観的な調和と延焼防止の開口制限を同時に解決しました。
外壁側で高い防火性能を確保することで、内部は木の構造体を「あらわし」にできました。これにより、中に入ると木の香りがしたり、木質ならではの雰囲気が感じられたりします。カフェやベーカリーの天井高がそのまま生かされているので、森の中にいるような憩いの雰囲気になっています。
岡本:このアイデアのプレゼンをした時、建築の専門家である審査員の方も実現可能なのかと驚かれていましたね。
末光:日本全体の問題として脱炭素社会への貢献という観点からも木造建築は重要であるため、このプロジェクトが先進事例となって全国に広がってほしいと願っています。
全国で初めて、商業施設でありながら、
防火地域での木造「延焼防止建築物」を実現
広島県らしさはどのように表現しましたか。
後藤:広島県らしさを表現するために、いくつかの工夫を凝らしました。
外壁の「木ルーバー」と呼ばれる木格子に、広島県産の木材を全て活用しました。建物の外壁に設置した「ショーケース」では、デザインにこだわった県産品や工芸品を展示しており、半年に一度入れ替える仕組みにしています。デザイン性の高い広島の製品を選定する際には、広島県の取り組みの「BUYひろしま」と、広島市の取り組みの「ひろしまグッドデザイン賞」とも連携し、クリエイティブのプロフェッショナルの意見を尊重しながら進めましたが、その調整には大変苦労しました。
後藤:「もとはちこみち」や「県庁の森」の舗装に、広島県内で廃材となった牡蠣殻を建材として配合したインターロッキングブロックを使用し、芝生広場に設置された「もみじ柄のアートベンチ」にも牡蠣殻を配合して九州大学と広島工業大学の学生がコラボレーションしてデザイン・制作しました。地元広島出身の学生が中心となり、彼らの通学路だった場所に自分たちの作品が設置されるという、思い入れの深いプロジェクトになりました。
芝生広場に設置された「もみじ柄のアートベンチ」
さらには、ガラス面の衝突防止シールに、厳島神社やレモン、鳥居、もみじといった広島らしいマークを組み合わせたデザインを採用し、訪れる人が広島を感じられるように意識しました。
⽊ルーバー
「森の⽊箱」
ベンチも整備
インターロッキング
衝突防⽌シール
カラフルなガーランド
地域活性化の新たなモデルケース
今後の展望をお聞かせください。
岡本:我々は、「Urban Park Life HIROSHIMA構想」を掲げて、この県庁事業を含む周辺の再開発を一体的に捉えており、特に今住んでいる皆さまに「広島っていいところだよね」、「誇らしいよね」と感じてもらえるような場所になることをめざしています。人々が定住し、繰り返し訪れたくなるような観光地としても発展できるよう、このプロジェクトがその一翼を担い、広島の持続的な発展につながるまちづくりに貢献したいです。
松本:県庁舎の敷地や憩いの施設などにおいてたくさんの人が行き交い、周辺地域の再開発事業などの周辺地域の活性化に寄与し、この都心部にますます活気が生まれることを期待しています。 県庁舎敷地有効活用事業を一つの成功事例として今後もさまざまな取り組みを行い、地域全体の魅力向上の場となるよう引き続き取り組んでまいります 。
末光:今、全国各地で庁舎の維持管理で大きな費用がかさみ問題になっていますが、このように公共の敷地を一部民間に開放してにぎわいを創出することで、市民に開きながら庁舎の維持管理費を確保していく、民間事業者としても庁舎があることである程度の事業性が見込める、というウィンウィンの関係になっています。このような試みがこれからの持続可能な公共建築の新しいモデルとなり広がっていくことを期待しています。
03官民連携でにぎわいを生み出す中央公園エリアマネジメント協議会
お話を伺った方
広島電鉄株式会社
地域共創本部地域共創事業部
坂元 麻里
株式会社中国新聞社
地域ビジネス局
ソリューション推進室
田儀 慶樹
広島市 都市整備局都市機能調整部
紙屋町・八丁堀地区活性化
担当課長補佐
戸田 知城
NTTアーバンバリューサポート株式会社
ひろしまゲートパーク所長
上元 新一郎
NTT都市開発株式会社
中国支店
新本 悠花
まちづくりを見据えたエリアマネジメント
この協議会発足の背景を教えてください。
戸田:本市では、広島駅周辺地区と紙屋町・八丁堀地区を都心の東西の核と位置付け、都市機能の集積・強化を図ることにより、相互に刺激し高めあう「楕円形の都心づくり」を進めています。2017年3月には、広島県と連携して「ひろしま都心活性化プラン」を策定し、都心におけるにぎわい創出や回遊性の向上などを図るため、官民連携による魅力ある都心づくりを推進しています。
2019年5月にサッカースタジアムの建設場所が中央公園広場に決まり、旧広島市民球場跡地の活用を本格的に検討する中で、2020年3月には「中央公園の今後の活用に係る基本方針」を策定しました。中央公園は、広島の戦後復興のシンボルとして整備され、くつろぎや文化を醸し出す要素を兼ね備えた国際平和文化都市の顔となるにぎわいの空間を創出し、広域的な集客の核となることが求められています。パブリックマインドを持った民間の活力を最大限活用するという大方針を掲げ、中央公園内の各施設が連携し、周辺地域を含めたエリアマネジメントの推進を基本方針に盛り込みました。
旧広島市民球場跡地整備事業では、2017年度の都市公園法改正により創設された「Park-PFI制度(民間事業者の資金やノウハウを活用して公園を整備・管理する制度)」を活用し新たな施設を整備するとともに、整備後の施設の管理運営も行ってもらえるよう「指定管理者制度」を併用しています。さらに指定管理業務に関する附帯要件として、中央公園全体の魅力向上に向けた取り組みを行うエリアマネジメント団体の立ち上げを公募条件としており、他のプロジェクトにはない本事業の特徴になります。
田儀:構成員としては、正会員、行政会員、特別会員の三つのカテゴリーがあります。正会員は、ひろしまゲートパーク、広島サッカースタジアム、中央公園広場エリア、そして今年3月に開業した広島城三の丸エリアの4事業者です。それらの事業者と公園内の公共施設等を管轄する行政の所管課長が行政会員、公共施設等の運営事業者が特別会員として加盟しています。官民連携した組織であることが特徴的で、協議会の設立は2022年7月28日です。
どんな内容に取り組んでいますか。
田儀:中央公園は42.8ヘクタールと非常に広いエリアで、どこまでが中央公園なのか市民の方にも認識されていません。認知と回遊性の向上を目的とした取り組みを行っています。
具体的には、2023年3月31日のひろしまゲートパーク開業に合わせて、スタンプラリーを実施しました。その後、各正会員の施設が開業するたびにスタンプラリーやクイズラリーを実施して回遊性に力を入れています。参加者からは、「中央公園内にこういった施設があることを初めて知った」「回ってみて楽しかった」といった反応をいただいており、一定の成果を感じています。
マチナカスタンプラリーの実施
広島市内中心部の回遊の発着点に2日間で約1400人が参加
新本:これだけ広島市の中心地でPark-PFI事業をしている事例は全国的にも珍しく、我々のもとに多くの事業者や行政から問い合わせを受けています。我々NTT都市開発だけで時間を作っていくのが難しい状況にあり、そこで2024年10月に中央公園エリアマネジメント協議会の視察ツアーを開始しました。
上元:ピースプロムナードと呼ばれる、原爆ドームが真正面に見える平和記念公園からの平和の軸線が人気です。イベント管理を行う人にとっては、大屋根ひろばや電気・水道の供給施設などにも関心があるようです。どうしても施設単体での集客について聞かれがちですが、周辺施設からの誘客もありエリア全体としてにぎわっていることを伝えています。
平和記念公園からの平和の軸線が人気のピースプロムナード
田儀:今年3月末に広島城の三の丸エリアがオープンし、四つの正会員の運営施設が全てそろったことに合わせて、「中央公園らんらんマップ」を制作しました。中央公園内の施設ならではのアクティビティや新しい発見といった体験に重点を置いた内容で、好評で2か月後に増刷しました。
新しい発見が見つかる
中央公園らんらんマップ
どんな施設があるのかを分かりやすく、
見渡せるようにデザイン
新本:モビリティ実証実験を2024年11月と翌年 2月に実施しました。11月は広島市内のエリアマネジメント団体や事業者が、露店やイベントを仕掛ける「CITY SCAPE」に参加し、自転車やスローモビリティなど3種類のモビリティを実証しました。
2月は行政関係者13名が集い、スローモビリティの安全性やルートの検証を実施しました。Park-PFIの3事業者をつなぐデッキをモビリティで移動する、横断的な初の試みです。中央公園は全て歩くと1時間以上かかる広大な敷地なので、それをアシストできないかという目的で実証しました。回遊性向上のために引き続き取り組んでいきます。
互いの強みを生かしてまちをより良く
取り組みの中で課題や工夫がありましたら教えてください。
田儀:年間を通じて多くの人が楽しめる多彩なイベントが開かれるように配慮しています。小さなイベントや市民レベルのイベントでも、レイアウトを工夫することで、ひろしまゲートパークのイベント広場で広がりのあるイベント会場を演出できるよう工夫しています。
閑散期、特に冬場や平日にイベントが全く開かれない状況が続かないよう、折々の季節に応じた季節感のあるイベントを自主イベントとして開催するよう心掛けています。施設テナントとコラボしたマルシェイベントにも挑戦し、手応えを感じています。
坂元:広島のまちはどうしても車中心の社会で、川があるので橋が多く、アップダウンが非常に多いという特徴があります。歩いたり自転車に乗ったりする時に障害が出てくることも。また、紙屋町交差点には昔は横断歩道があって人が自由に動けましたが、現在は地下に潜らなければいけないなど、人が動くのが難しい状況にあります。
中央公園エリアが整備されたことで、これまでの「目的」に加えて、イベントや憩いを求めて、またスポーツ観戦のために、中央公園エリアそのものやエリアで行われている催しを目的地として移動が生まれていると感じています。今後はアップダウンが多くサインが見づらい、欧米系の観光客も多く英語表記も必要など、視覚的に分かりにくい課題に特化してスピーディに対応できればと思っています。
どのような成果を得ていますか。
田儀:地域メディアとしての立場から言うと、近年郊外エリアの開発が進み、都心部の空洞化が懸念されていました。ひろしまゲートパークやサッカースタジアムなど中央公園内の開発に伴って、人の流れを再び中心部に戻す都心回帰の流れができつつあると感じています。
特に印象に残っているのは「ひろしまクリスマスマーケット」です。2024年で2回目でしたが、20日間で約33万5000人の方が来場しました。特に10代から20代の若い世代が目立ちました。広島の観光課題であるナイトタイムエコノミーの促進にも好影響を与えたと自負しています。
上元:ペットOKの公園であるため、トリミング店が主催したペットのイベントがあったのもひろしまゲートパークらしいイベントでした。夏の盆ダンスも良いですよ。
戸田:旧広島市民球場跡地は、広島東洋カープの本拠地球場として長年多くの方に親しまれ、まさに官民連携事業の先駆けであり、特別な場所です。ひろしまゲートパークも官民連携事業として取り組んでおり、開業後もイベントを楽しむ人、イベントがない日も子どもたちを連れて遊ばせる人など、日常的に様々な来訪者が年間を通じて訪れており、これまでとはまたちがう形で、にぎわいを創出する場所に生まれ変わることができたと思います。
坂元:エリアマネジメント団体だからこそ、各社の強みやノウハウを持っている会社が同じ方向を向いて、ここのエリアを良くしよう、まちを良くしようという思いを一つにして、効率的に動けています。単独では10だったものが、50や100を作ることができると思います。
スケートボードイベントの様子
ひろしまクリスマスマーケットの様子
広島らしさを大切に、にぎわいを国内外へ
今後の展望をお聞かせください。
戸田:中央公園では、ひろしまゲートパークをはじめ、広島サッカースタジアム、中央公園広場エリア、広島城三の丸(一部)が開業し、年間を通じて大小様々なイベントが開催されるなど、多くの来訪者でにぎわっています。また、サッカースタジアム建設にあわせてペデストリアンデッキが整備されたことで中央公園内の回遊性が向上し、来訪者の滞在時間が長くなるなど、新たなにぎわいが創出されています。
今後は、広島市中央公園エリアマネジメント協議会とともに、中央公園内はもちろん、周辺エリアと連携したにぎわい創出や回遊性の向上につながる取り組みをさらに進めて、広島の都心全体に波及していきたいと思います。
田儀:中央公園は戦後復興のシンボルとして整備されました。広島にとって大切なこのエリアが、にぎわい創出を通じた「未来への平和を紡ぐ場所」として成長し続けてほしいと願っています。
現在、エリアマネジメント協議会の法人化を検討しています。法人化した後、広島市から都市再生推進法人の指定を受けることで、広島市に対して提案ができるようになります。市民の声がより反映されやすくなっていくと考えています。
坂元:まちの中心部に平和や祈り、にぎわい、静かに休める場所が集まっている、全国的に見ても唯一無二の場所です。さらにいろんな国の方とも交流ができ、交通の結節点でもあるこの場所の価値を高めつつ、広島がより良いまちになっていければと思います。
上元:ひろしまゲートパークの名前は市民以外の人の認知がまだまだ低い状況です。平和記念公園の名前は世界中に届いているので、国内外の観光客にひろしまゲートパークが認知されて、観光の目的地の一つになってくれたらと思います。
新本:県外・市外から見ると魅力的な部分が、広島市民に気づかれておらず、4年連続で転出超過全国ワースト1位になっているなど課題も抱えています。しかしこの中央公園は、広島の魅力を打ち出せている施設になっています。人を集客することで、回遊性を促してまちの発展や転出超過の防止につながるように役立てていければと思います。
