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モビリティの発展は「人」の移動だけではなく
「モノ」や「情報」の移動も変えていきます。
さまざまなモビリティやそれを支える
ネットワークが進化していくことで、
より多くの価値や体験がつながっていくはずです。

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10歳 青木歩の場合

10歳 青木歩の場合

"宇宙への道"を開く
未来のモビリティ

青木歩は、X市に住む小学4年生だ。歩は幼い頃から、自動車というものにあまり馴染みがない。住宅街と学区内の移動は、徒歩や自転車、または畳んでカバンにしまえる小型電動モビリティで事足りる。荷物は自動電動カートやドローンが運んでくるし、単純な製品は3Dプリンタなどですぐに出力できる。どうしても車が必要なときには、住宅街の外れに24時間いつでも使えるシェアカーが停まっている。歩は、ほぼ完全なカー・フリー・エリアで生まれ育ったのだ。
昔は車が走っていた道路は今では大部分が必要なくなり、住民の憩いの場や屋台村、植物園、菜園などに変えられている。3Dプリンタで自ら生み出したおもちゃや、ARデバイスを駆使して、日が暮れるまで遊び回るのが歩の日常だった。
夏休みが始まって間もなく、歩は困り顔の父親に呼び止められた。
「おじいちゃんが、早く歩に会いたいって言って聞かないらしいんだ」
おじいちゃんというのは歩の母の父のことで、商業や観光の中核であるY市を挟んだ向こう、Z町に住んでいる。今年は歩の母が一足先に向かったのだが、祖父は歩に一刻も早く会いたいとわがままを言っている――ということらしかった。
「僕は土曜までは仕事があって、歩を送っていけない。だけどおじいちゃんが納得しなくてね、歩なら一人で来られるだろうって言うんだ」
「自転車で行くってこと?」
「まさか」と父は驚いた顔をした。「道路は危ないんだぞ。グルグルで調べて、公共交通機関を乗り継いで行くんだ。僕は、まだ歩には早いと思うんだけどなあ」
グルグルも公共交通機関も、歩には耳馴染みのない言葉だったが、その響きには冒険の匂いがあった。歩は渋る父を押し切って、明日行くよ、と祖父に電話したのだった。

グルグルというのはMaaSアプリの一種だった。電車やバスだけでなく、乗合タクシーや小型モビリティ、シェアサイクルまで含めて最適な移動手段を調べ、簡単に予約できる。歩が祖父の住所を入力すると、数秒でルートと乗り継ぎの案内が表示された。
翌日の昼下がり、歩はリュックサックを背負って父に挨拶すると、家を飛び出した。アプリの指示通りに自転車をしばらく漕ぐと、学区の外れに目的の停留所があった。気が急いたからか、少し早めに着いてしまった。

手持ち無沙汰になった歩は、グルグルを立ち上げてメニューを開いてみた。その中に気になる項目がある。「検索条件:寄り道」。試しに押してみると、不思議な文言が目に飛び込んできた。
――宇宙に寄り道? ロケット打ち上げを見に行こう!
宇宙というのは、歩にとっては理科の教科書の中の言葉だった。なんとなく惹きつけられてその言葉に触れると、「ルート条件を変更しました」と表示された。何かまずいことをしてしまったか、と一瞬焦ったが、電動マイクロバスがやってくる音に心配はかき消された。地図上のゴールは変わらず祖父の家を指していた。だから大丈夫だろう、と歩は思ったのだ。

バスから電車に乗り換え、一駅で降りてY市の駅前広場へ。
次に何に乗るんだったかとアプリを見ると、そこには「人力車」と表示されていた。
「お、君が青木歩くんかな?」
声に顔を上げると、そこには半袖のTシャツを来た若い男の人が立っていた。黒い幌のついた大きな車椅子のようなものを引いている。どうやらこれが人力車なのだった。
「ええと、ルートは......なるほどね、ロケットか」
歩を座席に乗せると、青年は手元を軽く確認して走り出した。日よけの下に涼しい風が吹き込んできて、歩は夏休みらしい開放的な気分になった。
「君、宇宙に興味あるの?」と青年が訊く。
「ううん。おじいちゃんちに行くだけ」
「見ればきっと興味出てくるさ。午後の打ち上げはもうすぐだ」
人力車は街を抜けて、海の見える広い道路に出た。家の周りでは見かけないさまざまな種類の自動車が、彼らを追い抜いていく。そして海岸の向こう、半島のように突き出した場所が、きらきらと光っていた。
それがロケットだった。ごうごうと音がしたかと思うと、銀色に輝く鉛筆が、尻から火を噴き出しながら垂直に飛び上がった。そして見る間に雲を突き抜けて、歩には見えない遙か高みへと消えていった。

「あとはこれに乗れば、おじいちゃんの家だよ」
人力車の青年は歩の頭を撫でると、一台の大振りな自動車に乗せてくれた。
中には白衣を来た男女が乗っていて、歩を見ると微笑んだ。
「あら、君が歩くんね」と女の人が言った。
「どうして知ってるの?」
「君のおじいちゃんと友達だから」
車はZ町の古い住宅街に入った。X市やZ市と比べると人けは少ないが、町のあちこちの空き地や広場にお年寄りが集まっているのが見える。どの場所にも大きめの車が停まっていて、それが喫茶店や床屋の代わりになっているようだった。
歩の乗った車は、町の一角の駐車場に滑り込んだ。どこか見慣れた場所だ。祖父の家はすぐ近くだった。
女性は車のドアを開くと、駐車場の隅でベンチに座る人に声をかけた。
「青木さん、お孫さん来ましたよ!」
すると祖父は立ち上がって、にっこりと笑いながらこちらに手を振った。
歩を運んできた車は、移動診療所だったのだ。祖父の定期検診が終わると、歩は手を繋いで一緒に夕方の町を歩いた。
「歩、この夏はどこに出かけたい?」
祖父の質問に、歩は咄嗟に答えた。
「宇宙!」

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価値をドライブする3つの変革

自律走行車の実用化や普及はもちろんのこと、シェアモビリティやパーソナルモビリティ、ドローンなど、モビリティの形態が多様化していくなかで、移動が変わっていくことは都市の形を大きく変えていきます。人・モノ・情報の移動はどのように変わっていくのでしょうか。

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