Green Futureレポート

Green Future Report
クマ被害と木材循環利用の意外な関係

NTTファシリティーズ 環境セミナー

NTTファシリティーズは2026年2月、NTTアーバンソリューションズグループの社員を対象とした環境セミナーを開催しました。NPO法人青梅林業研究グループから講師をお招きしてクマ被害の要因と森林資源の現状についてご講演をいただき、この2つの間の意外な関係を学びました。

生物多様性の保全と回復に向けたNTTアーバンソリューションズグループの取り組み

2022年3月に環境負荷低減目標および環境スローガン「Green Future with US」を定め、環境に優しい街づくりに取り組んできたNTTアーバンソリューションズグループ。不動産の開発・運営、各種コンサルティングなどにおける生物多様性の保全と回復の重要性をふまえ、2025年10月に「NTTアーバンソリューションズグループ生物多様性方針」を策定し、生物多様性に関する社員を対象とした教育の機会を設け、リテラシー向上にも取り組んでいます。また、「生物多様性のイニシアチブ※1 にも参加し、それぞれの掲げる理念・原則の遵守、ならびに達成目標に貢献するべく努めています。グループの一員であるNTTファシリティーズでは、2025年10月に建築分野のGX(グリーントランスフォーメーション)推進に向けて新たな環境目標を策定し、「建築物のGX推進を担う専門人材の育成」に力を入れています。今回のセミナーは、この取り組みの一環としてNTTファシリティーズ主催のもと、NPO法人青梅林業研究グループ(青梅りんけん)から2人の講師をお招きしてNTTファシリティーズ本社内「FL@T®※2 にて開催されました。

  • ※1 NTTアーバンソリューションズは「生物多様性のための30by30アライアンス」に参加し、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全する目標達成に向けた取り組みを推進しています。NTT都市開発は「経団連生物多様性宣言・行動指針」に賛同を表明するとともに、同イニシアチブに参加し、「自然と共生する社会の実現」に向けた取り組みを推進しています。
  • ※2「FL@T®」とは、2025年7月にNTTファシリティーズ本社内にオープンした共創スペースです。さまざまな活動目的に応じた部屋やスペースで構成されており、交流イベントや勉強会、タスク横断型の会議が開催され、リアルコミュニケーション創出の場として活用されています。「FL@T®」は株式会社NTTファシリティーズの登録商標です。
NPO法人青梅りんけん副理事長の林敏幸さん(左)と、理事の松澤郁夫さんの写真
NPO法人青梅りんけん副理事長の林敏幸さん(左)と、理事の松澤郁夫さん。青梅りんけんは1995年に東京都の林研グループのひとつとして発足し、「人と森をつなぐ」をコンセプトに、「森林の保育・保全、森林環境教育」に関わる各事業を展開し、青梅の森林を次世代へ受け継ぐ人づくりを推進されています。また、子どもたちの自然体験から企業の社員研修やCSR活動のサポートまで、年間約1,200人に対して環境教育の機会を提供しています。
POINT

NTTファシリティーズは、2017年3月に公益財団法人東京都農林水産振興財団が東京都とともに進める「企業の森※3」の趣旨に賛同・協定を締結し、東京都青梅市黒沢の森林を「エコロじいの森」と命名して、森林整備活動を実施してきました。2017年4月に社員や家族とともに約300本の苗木の植樹からはじまり、2022年度からは参加の枠組みをNTTアーバンソリューションズグループへと広げ、地域の方々と協力して定期的に森林整備・育成活動を行い、木々の成長を見守っています。毎年春には下刈りなどの作業、秋には成長観察会や体験学習を行っており、青梅りんけんには秋のプログラムにご協力いただいています。

  • ※3 企業の森:東京都が進める多摩産材の利用促進・花粉対策を寄附金により支える制度で、森林所有者、東京都農林水産振興財団、協賛企業・団体の三者で森林整備に関する10年間の協定を締結し、「花粉の少ない森づくり募金」及び森林整備費用を寄付するとともに、森林育成活動への協力を行うものです。
2017年4月に行われた初回の植樹の様子
2017年4月に行われた初回の植樹の様子
2017年4月に行われた初回の植樹。スギやヒノキを伐採した後の何もないまっさらな山肌に、花粉の少ないスギの苗木を植えました。
植樹後も定期的に木々の成長に応じた保全活動、2018年春に実施した下刈り作業の様子
植樹後も定期的に木々の成長に応じた保全活動、2023年秋に行った枝打ちおよび切った枝を木に巻き付けて獣害を防止するための作業の様子
植樹後も定期的に木々の成長に応じた保全活動を行っています。左は2018年春に実施した下刈り作業、右は2023年秋に行った枝打ちおよび切った枝を木に巻き付けて獣害を防止するための作業です。
2017年秋に行ったしいたけの原木作りの様子
2018年春の下刈り作業に合わせて行った鎌研ぎ体験の様子
保全作業以外にも、エコロじいの森はグループ社員の環境教育やコミュニケーションの場として活用してきました。左は2017年秋に行ったしいたけの原木作り、右は2018年春の下刈り作業に合わせて行った鎌研ぎ体験です。

エコロじいの森の木々は、現在では樹高約3メートルまで成長しました。しかし森林での活動をする際に気がかりなのは、近年問題になっているクマ被害の拡大です。昨今のクマ出現報道などを踏まえると、2025年秋の活動は見送らざるを得ませんでした。これらの状況を踏まえ、活動を続けていくためには私たちがクマや林業について正しい知識を得る必要があると考え、青梅りんけんと相談して今回の講演テーマが決まりました。

講演のテーマは「クマ被害と木材循環利用の意外な関係」

講演では、まず林敏幸さんが「クマ被害の拡大要因と背景」のテーマで、クマによる人身被害の状況やクマ被害の拡大要因について解説され、さらにツキノワグマの生態や習性、クマ対策に必要なことについて教えていただきました。続いて、松澤郁夫さんが「森林資源の循環利用の現状」のテーマで、「育てる」「伐る」「使う」「植える」の各分野について日本の森林面積と蓄積量(木の幹の体積の総量)や木材自給率、再造林率などのデータを示したうえで、日本の林業の現状や課題、今後の木材利活用のあり方について解説されました。

林敏幸さんが、クマ被害が増加している理由を解説。クマの個体数増加やエサとなるドングリの凶作だけでなく、過疎化・高齢化による耕作放棄地の増加や林業の不振による放置人工林の増加などによって、山と人里の境界が曖昧になっていることも大きな要因だそうです。
松澤郁夫さんは、日本の森林は蓄積量(木の幹の体積の総量)が増加しているにも関わらず、伐採率が低く、放置人工林が拡大している現状を解説。国産木材を適正価格で流通させることで林業の収益性を回復し、間伐や枝打ちなどの適切な森林管理によって見通しのよい森林構造が戻ってくれば、クマと人間の適切な距離が保たれ、クマ被害軽減や生物多様性保全につながることをご解説いただきました。
講演の後の質疑応答の様子
講演の後の質疑応答の様子
講演の後の質疑応答の時間では、参加者から「森林再生にあたり、針葉樹と広葉樹の混交林をつくるメリット・デメリットは?」「光が差し込み下草の生えた明るい森と、土がむき出しの暗い森との違いはどうして生まれるのか」といった質問が出ました。

NPO法人青梅りんけん
副理事長

林敏幸さん

日本では森は身近な存在ですが、みなさんは意外に森のことを知りません。昔は裏山で薪を拾っていた生活だったのが、今は電気、ガス、水道がある生活に慣れて、森のことを忘れちゃったんですよね。その距離感を縮めるためには、いま森がどうなっているのか、関心を持っていただくことが一番です。ですから今回のセミナーのような場を設けていただくのは非常にありがたいです。エコロじいの森での森林整備活動も森との距離感を縮める絶好の機会ですので、ぜひ続けていって欲しいですね。

NPO法人青梅りんけん 副理事長 林敏幸さん
NPO法人青梅りんけん 理事 松澤郁夫さん

NPO法人青梅りんけん
理事

松澤郁夫さん

山や森は遠くから見ているだけではなくて、中に入ってみて何を感じるか、何に気づくかということがすごく大事だと思います。さまざまな森の中に入っていると、手入れされている森の美しさ、手入れされていない荒れた森との違いがわかってきて、人と森が実は密接につながっているということに気づけると思います。そのためにもまずは日本の森林の課題を少しでも多くの人に知ってもらい、大人も子どもも森と関わりがあるのだということに気づいてもらって、何かしらの行動に変えていくということを広めたいです。それが青梅りんけんの役割だと思っていますので、今回のセミナーのような機会があれば今後もぜひ協力させていただきたいですね。

NPO法人青梅りんけん 理事 松澤郁夫さん

セミナーを通じて実感した森を適切に管理し、生物多様性を守ることの重要性

今回のセミナーは、クマ被害というテーマの話題性もあり、現地参加とオンライン視聴で合計76名が参加しました。参加者は、クマ被害が増加しているのは単純な自然環境の変化だけが原因ではなく、建築や街づくりという自分たちの仕事と関わりのある林業の課題とも密接に関連していることを知り、国産木材の利用や持続可能な森林管理に貢献することの重要性を学びました。
参加者の中から、3名に講演で感じたことを語ってもらいました
株式会社NTTファシリティーズ データセンターエンジニアリング事業本部 小澤優奈

株式会社NTTファシリティーズ
データセンターエンジニアリング事業本部

小澤優奈

私は自然が身近な環境で育ったのですが、森のことはよくわかっていませんでした。しかし今回のセミナーでクマ被害や森林問題が個別の問題ではなく、人口減少、後継者不足、高齢化といったさまざまな社会問題と複雑に絡み合っていることが実感できました。業務上は直接木材の流通に関わることはありませんが、今後は消費者として国産木材製品を適正価格で消費することを心がけていきたいです。

株式会社NTTファシリティーズ データセンターエンジニアリング事業本部 小澤優奈

株式会社NTTファシリティーズ
総務人事部

坂下俊秀

今まで森はそのままの状態で放っておいたほうがよいと思っていましたが、逆に人が手を入れて管理しないと荒廃してしまうというお話が印象的でした。私は普段から庭で野菜作りをしていて、植物や土については関心を持っています。昨年は初めてエコロじいの森の活動にも参加し、木のコースター作りを体験しましたが、今回のセミナーに参加して、2026年春に青梅の新しいエリアで予定されているエコロじいの森2での植林活動にもぜひ参加したいと思いました。

株式会社NTTファシリティーズ 総務人事部 坂下俊秀
NTT都市開発株式会社 都市建築デザイン部 石井友里香

NTT都市開発株式会社
都市建築デザイン部

石井友里香

クマ被害は、ニュースを見ていても地方の話で自分とは直接的には関係ないと思っていましたが、建築資材の発注者側である自分の仕事と関係があることがわかりました。そして適正価格で木材を流通させることが、森林地域の住民の仕事を守り、クマの生息域を明確にするといった循環があることを認識しました。コスト面など課題もありますが、適正価格で発注することが未来への責任につながると思いますので、積極的に取り組んでいきたいです。

NTT都市開発株式会社 都市建築デザイン部 石井友里香
環境セミナーに込めた主催者の思い

株式会社NTTファシリティーズ
経営企画部サステナビリティ推進室長

入戸野匡彦

2025年秋、エコロじいの森での秋のプログラム実施を見送った際、青梅りんけん様とのお話の中で、クマ被害拡大の背景には林業の課題があることを知りました。建築設計や施設運営に携わっている社員に向けて、林業の現状を知る必要があると考え、今回のセミナーのテーマに選びました。クマの被害が林業衰退による森林の荒廃とも結びついていることを多くの社員に知ってもらうことができたと思います。今後もこのようなセミナーを継続して開催することで、社員に環境について考えてもらう機会を増やしていきたいと思います。

株式会社NTTファシリティーズ 経営企画部サステナビリティ推進室長 入戸野匡彦
※記載内容は2026年3月現在のものです。施設・サービスの内容は予告なく変更・終了することがあります。