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2023年4月から12月まで、アーバンネット大手町ビルでデジタルトランスフォーメーション(DX)を活用した実証実験が行われました。すでに取り組みがはじまっていたビル管理運営業務における設備台帳や複数ビルのBM(Building Management:ビルマネジメント)業務プロセスを集約し管理できる「Planon」と呼ばれるFM(Facility Management:ファシリティマネジメント*)支援システムの運用に加え、ビル内の360度画像や設備の点検結果、対応履歴などを紐付けた「Beamo™︎」、さらに設備状況を撮影して遠隔地で確認することができる「スマートグラスクラウド」などを組み合わせ、業務の効率化などを図る実証実験です。その背景や狙いはどのようなところにあるのかを関わる皆さんに聞きました。

  • 本ページに掲載されたサービス名や登場する人物の所属会社名及び役職、紹介した施設や画面などは2023年12月時点のものとなります。

取材:わが まち みらい・実績レポート取材チーム

実証実験に背景にあった、
ビル管理運営業務の切実な課題

ビル管理運営業務は大きく3つのマネジメント業務に分けられます。まずBM(Building Management:ビルマネジメント)と呼ばれる設備清掃・確認、点検計画の立案・計画書作成、報告書作成、警備・防災、巡回などを行う業務、そして2つめはPM(Property Management:プロパティマネジメント)と呼ばれるテナント誘致・募集や入居者対応、賃料回収など不動産経営のさまざまな業務をオーナーに代わって行う管理業務、そして3つめが建築物所有者の資産をどのように効率的に増やしていくかを考えるAM(Asset Management:アセットマネジメント)と呼ばれる資産管理業務です。設備点検に関する情報がBMからPMを通してAMへ正しく伝達されるという流れが、安心で安全なビルの運営には重要となります。

「実際にビル内の設備を熟知しているBM業務、PM業務に携わる方々が減ってきているという課題があります」と話すのは、NTTアーバンソリューションズ デジタルイノベーション推進部 甲斐惇也さんです。前職でBM業務従事者と協業しPM業務を担うNTTアーバンバリューサポートに所属していた甲斐さんは、BM業務、PM業務のそれぞれの業務内容を把握しており、各業務の課題を認識した上で、どのような解決の道筋があるのかを考慮しながら取り組みました。

「特にBM業務では、さまざまな資格を持って業務にあたる有スキル者の方だけが設備を熟知していて、私を含めたそれ以外の方々は知識や理解が乏しいという、いわゆる属人的な状況という課題があります。これから設備の知識を得ようとしても、設備の素人にとってExcelやWordなどに記載された文字情報だけでは直感的に理解しづらい。また担当物件も数多くあり、そのすべてに設備の確認事項があるたび足を運ぶというのも時間的制約上難しい。そうした切実な課題を解決したいという背景が、今回の実証実験にはありました」

現場での実証実験から見えてきた可能性

「Beamo™︎」「スマートグラスクラウド」を提供しているNTTビズリンク ビジネスソリューション本部 担当課長 笠井敦志さんは「今回、活用したツールは映像コミュニケーション技術を活用したソリューションになりますが、ここ一年ほどで従来のお試し的な使い方から、本格的に導入していく機運が高まってきたことを実感しています。BM業務に携わる有スキル者やベテランの方々が退職されるなど、BM業務に限らず人財不足や人員不足は業界を問わず大きな課題となっています。これからの働き方や今後の業務継続自体を見据え、真剣に考えるフェーズだと思います。私たちはその課題に対して、映像技術を使って解決していこうという事業ミッションを掲げ取り組んでいます。その中でも、今回のアーバンネット大手町ビルでは、各ソリューション単体の使用ではなく360 度映像ソリューション『Beamo™︎』と遠隔作業支援『スマートグラスクラウド』の特長を組み合わせて活用しているところが特徴的です」と話します。

「Beamo™︎」は、市販の360度カメラとスマートフォンを使って、建造物の構造をストリートビューのように視覚データ化し、地理データや日時データとも紐づけて設備の様子を統合管理できます。また、「スマートグラスクラウド」は、ウェアラブル端末で撮影した動画データをクラウド上にアップし、映像と音声によって遠隔地でも現場の様子をリアルタイムで確認することができます。

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アーバンネット大手町ビル地下階での「Beamo™︎」のための撮影風景
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胸部に「スマートグラスクラウド」を装着して、防災訓練に取り組んでいる

また、NTTビズリンク ビジネスソリューション本部 高橋勇気さんは「DXソリューションは各社で導入頂いておりますが、"導入したが扱いが馴染まず利用していない"という企業様もいらっしゃいます。できる限り現行の業務に負担をかけないよう、実際に装着、ご利用頂く皆様に"使いやすい"と感じて頂くことがDXを浸透させるうえで重要な要素だと考えています。今回の実証実験を通して、現場の皆様が装置を装着した際にいかに邪魔にならないか、作業を阻害しないか、また、長時間装着した場合はどうか、など現場ならではの気づきもありましたので、今後に向けた改良に活かせると感じました」と話します。

設備台帳のデータベース化と
設備の視覚化による効率化

では、実証実験を通してDXのソリューションを活用した現場の声はどうだったのでしょうか。現在アーバンネット大手町ビルのBM業務を担当するNTTファシリティーズ ファシリティソリューション部 担当課長 川村昭浩さんは「現場におけるBM業務の属人化という課題は、まさに私たちも強く感じているところです。設備点検・確認、点検計画の立案・計画書作成、打ち合わせ、報告書作成、警備・防災・巡回などBM業務は膨大で、その管理方法も課題でした。そこでまず『Planon』という設備台帳や複数ビルのBM業務プロセスを集約するプラットフォームを構築、スタッフ共有の作業進捗管理体制をつくっています。さらに今回、『Beamo™︎』を使って設備を映像管理することで、より視覚的に設備を把握することができるようになりました」と振り返ります。

また、NTTファシリティーズ ファシリティソリューション部 認定ファシリティマネジャー(CFMJ) 廣瀬昌平さんは「ビルそれぞれにそのビル設備に特化したプロのBM業務を担う方々はいますが、どうしてもビルごとでバラつきが出てしまいます。『Planon』によって、複数ビルの設備情報を集約してエリア管理することで、BM業務の標準化も実現することができます」とし、実際に「Planon」や「Beamo™︎」を操作するNTTファシリティーズ ファシリティソリューション部 福島優衣さんは「最初こそ、操作に慣れるのは少し大変でしたが、使いこなせるようになると、これまでの書類による報告業務などよりもすばやく管理することができ、業務効率も上がったと思います」と、成果を話します。

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画面上で「Planon」のデータベースと「Beamo™︎」による設備内の画像を照らし合わせて打ち合わせる様子
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毎週行う防災訓練時、「スマートグラスクラウド」で撮影した現場の様子を見ながら遠隔で指示を出している様子

ビルの品質保持と継続性への対応。
業務効率化でさらなるサービス展開

NTTアーバンバリューサポート 首都圏第一事業部 第三グループ長 奥村晋吾さんは、PMの立場として今回の実証実験に参画し、その成果をサービス化することで、NTTグループの強みとして今後広いエリアにも展開していくといった視点を持って取り組んでいます。実際に活用した現場の声にも手応えを感じています。

「ビルの品質保持と継続性、現場管理者(リーダー)層の人財不足や世代の空白への対処、効率性の向上等が喫緊の課題であるという問題意識で取り組みました。属人化からの脱却やその場その場でやってきた業務内容や情報をいかにストックし活用していくかは、これからもっと重要になってくると思います。ビルで何かが起きるたび(または何かを検討するたび)に、多くの関係者が一斉に動くという現状は、非常に稼働やコストがかかります。画像データベースが確立することで、いつでもどこでも確認や資料作成ができる状況であったり、例えば全国の店舗を一元管理し、品出しやオペレーションの指示をする大手スーパーマーケットチェーンのスーパーバイザーのように集約的に管理するなど、現場の状況がわかり遠隔指示できるような状況と体制づくりは、フレックスタイム制での業務や新しい働き方の視点からも、今後BM、PM、AM業務に取り入れていく必要が大いに出てくるかと思います」
「また、ビルや物件の情報をBM、PM、AM各関係者が連携して一元的に把握することは、中間コスト削減だけでなく情報精度を劣化させない点でも必要になってくるだろうと思います。さらに別の用途として、例えば研修などにおいても動画や静止画を使った視覚的な情報で、全国から各地の同じレベルで習熟度を高めるといった使い方もできるではないかと思います」と展望を話します。

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手前からNTTアーバンソリューションズ デジタルイノベーション推進部 甲斐惇也さん、NTTアーバンバリューサポート 首都圏第一事業部 第三グループ長 奥村晋吾さん、NTTファシリティーズ ファシリティソリューション部 担当課長 川村昭浩さん、NTTファシリティーズ ファシリティソリューション部 福島優衣さん、NTTファシリティーズ ファシリティソリューション部 認定ファシリティマネジャー(CFMJ) 廣瀬昌平さん、NTTビズリンク ビジネスソリューション本部 担当課長 笠井敦志さん、NTTビズリンク ビジネスソリューション本部 高橋勇気さん

期待できる価値創出

安心で安全なビルの品質保持とその継続において、実際にビル運営業務を行なっている現場で抱える課題をレポートしました。属人化や人員不足など、喫緊の課題問題認識が今回登場いただいた皆さんには強くあります。「DXの導入というのは、今までのものをデジタルに置き変えるだけではなく、既存の業務や業態そのものを変えることではないか」と、NTTビズリンク 笠井さんは話しました。また、NTTアーバンバリューサポート奥村さんも「これからどのようにビルの資産価値を高めていくかを考えたときに、すぐにアクセスできて、視覚化され、ストックされた点検設備のデータベースというものが、資産価値のひとつとして重要になるだろうと思います」と話し、登場した皆さんが大きく頷いていました。課題の共有だけでなく、そこから見えてきた次につなげるビジョンの共有によってこれからも挑戦が続きます。

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レポートのまとめ

  • 膨大な業務内容を
    設備台帳データベースにまとめ、
    エリアも集約化。
  • 映像や静止画を使った
    DXソリューションと組み合わせ、
    設備認識を可視化。
  • 属人化からの脱却や
    品質保持と継続性を見据え、
    サービス展開を図る。

「Beamo™」は3i Inc.社の登録商標です。