快適性を維持しつつ、 消費エネルギーを抑えるという難問への挑戦。
NTTコミュニケーションズ ビジネスソリューション本部 主査 柳長秀さんは、「日本のビルや施設では多くの施設で快適性が実現されていますが、ワーカーの方々や店舗の方々、来客者の方々の不満の声を危惧して過度に空調を効かせ、省エネルギーの観点で運用されていない場合もあるように思えます。省エネルギーの観点では、快適性を損なわない程度で空調を弱めることが望まれます。しかし、屋内環境に影響を及ぼす外気温が刻一刻と変化する中で、空調の設定を手動で変更して程よい温冷感環境を提供することは難しく、AIを活用した環境予測技術が有益と考えます」と話します。柳さんは、NTTコミュニケーションズで、多くのビル施設運営者の空調オペレーションの課題解決について、AI空調制御最適化システムをスタンドアロンシステムではなくクラウドシステムとして展開できないかと取り組んできました。今回の実証実験では、AI空調制御最適化システムのプラットフォームを準備提供し、商用化となりえるサービスクオリティを受容可能なコストで実現させられるかどうかを見極める役割を担いました。
必要最低限の設備による省エネルギー、 商用サービスへの前進。
また柳さんは、一日あたり平均で約30%のエネルギー削減の成果に加え、実装の容易性についても注目、「データ収集の量は、多ければ多いほどAIの機械学習にとってはより精度の高い予測ができますが、商用サービス導入を念頭に置くと、たくさんの数のセンサー設置は難しいという現実があります。今回はひとつの空調制御エリアに対してひとつの温湿度センサーを設置するという設計にしました。
さらに、施設にとって空調管理というのはとても気を遣う分野のひとつですので、実験前はAI制御に対しての懸念の声もありましたが、稼働後はテナント入居者の方々や店舗の方々からのクレームもなく無事に完了できたことも私としては満足している点です。
今回の実証実験によって、一定の実用性が得られたと思います。他のビル内においても同様の省エネルギーの効果が得られるだろうということで商用サービス実現へ大きく前進することができました」と話します。
実際のアーバンネット名古屋ネクスタビル内に設置された温湿度センサー。このようなセンサーがビル内数箇所に設置された。
快適性の指標に使われているPMV(Predicted Mean Vote:平均予想温冷感指数)は、温度、湿度、放射温度、風量、着衣量、運動量の6つの要素から算出されます。この値は、算出値が正の値で大きいほど暑く感じ、負の値で大きいほど寒く感じる数値であり、この数値が±0.5の範囲内に収まるとその環境は一般的に「快適」とされます。この指標は、温冷感指標として1994年に国際規格 (ISO7730)になり世界各国で活用されている指標です。
PMV(Predicted Mean Vote:平均予想温冷感指数)の6つの要素と指数のグラフ。V字の折れ曲がる部分を0として±0.5の領域内の環境が快適と感じるところとされている。
「PMV指標による快適性の実現と言っても、ビルの構造によって空調の温度設定・吹き出し口の風量が影響を及ぼす程度が違うため、AI学習ではその精度を向上させるために、数値だけではなく空調制御エリアのフロアマップも読み込ませます」とのこと。
今後は、新たな人流センサーなど施設に過大な設備の拡充を推奨するのではなく、監視カメラなど既存のセンサー類のデータ利活用も検討し、現実的な商用サービス導入を進めていこうとしています。