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©Forward Stroke inc.
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NTT 都市開発が保有する5つの大規模オフィスビル共用部に2024年5月から屋内環境予測AIを用いた空調最適制御サービスを導入し、順次運用を開始します(※)。2022年~2023年に実施したアーバンネット名古屋ネクスタビル共用部吹き抜けエリアにおける実証実験で、快適性と省エネルギーを両立させる「AI空調制御最適化システム」有効性を明らかにしました。その結果を受け、商用導入に至っています。今回は、「AI空調制御最適化システム」で用いられている技術と実証実験から得られた成果について紹介します。

取材:わが まち みらい・実績レポート取材チーム

目標値を超える平均30%以上の省エネルギーを達成。
AI空調制御最適化システムの優れた有効性。

「人流・温湿度・エネルギー等の過去の情報と天気予報から当日の人流・温冷感をAIで予測し、空調を制御する仕掛けがポイント」と、実証実験の概要を話すのはNTTアーバンソリューションズ デジタルイノベーション推進部 主査 石田達郎さんです。石田さんは環境再現シミュレータ(※)の研究に取り組んでおり、今回の実証実験では、実フィールドで収集した生データを活用してAIのモデルを作りました。

「これにより、一日あたり平均で30%以上のエネルギー削減を達成することができました。ビルにおける空調エネルギーの削減をめざすという目的においては、確かな手応えを感じる数値だと思います。これまでのように人が見回って手動で空調制御を行うことなく、AIによってより効率的に自動で温度の上下設定を行うことで、省エネルギーの実現につながりました。

ビルなどの建物で一番多く利用されているのは空調関連のエネルギーで、40〜50%ほども占めます。この空調関連エネルギーを削減することは、省エネルギーに大きく貢献します。アーバンネット名古屋ネクスタビルにおける今回の実証実験は、研究成果を商用施設で実現する一歩となりました」

  • リアルな建物から得られるデータを利用して、デジタル化した建物を用いた仮想シミュレーションを行うこと。
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AI空調制御最適化システムの構成図。左図が構成の各要素で、右図がAI空調制御最適化システム導入前の従来の仕組みと導入後の制御されている状態を表している。混雑を事前に予測してAIが空調を制御している様子。

「AIを活用することで、①人流データで屋内の混雑を予測する、②過去の温湿度・エネルギー等の情報と天気予報から、当日の外気温・屋内の温湿度等を予測して空調制御を行う、③定期的に人流データ等を踏まえて①と②を繰り返す、そういった事前予測による、先回りした空調制御を行うことにより、温めすぎ、冷やしすぎを防ぎ、 "空調設備を上手にサボらせる工夫"や"ゆるやかな空調設定"を実現しています」と石田さんは話します。

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NTTアーバンソリューションズ デジタルイノベーション推進部 主査 石田達郎さん。背後のディスプレイに表示されているのは、アーバンネット名古屋ネクスタビル内の空調や照明などのエネルギー管理を可視化したBEMS(Building Energy Management System)。

快適性を維持しつつ、
消費エネルギーを抑えるという難問への挑戦。

NTTコミュニケーションズ ビジネスソリューション本部 主査 柳長秀さんは、「日本のビルや施設では多くの施設で快適性が実現されていますが、ワーカーの方々や店舗の方々、来客者の方々の不満の声を危惧して過度に空調を効かせ、省エネルギーの観点で運用されていない場合もあるように思えます。省エネルギーの観点では、快適性を損なわない程度で空調を弱めることが望まれます。しかし、屋内環境に影響を及ぼす外気温が刻一刻と変化する中で、空調の設定を手動で変更して程よい温冷感環境を提供することは難しく、AIを活用した環境予測技術が有益と考えます」と話します。柳さんは、NTTコミュニケーションズで、多くのビル施設運営者の空調オペレーションの課題解決について、AI空調制御最適化システムをスタンドアロンシステムではなくクラウドシステムとして展開できないかと取り組んできました。今回の実証実験では、AI空調制御最適化システムのプラットフォームを準備提供し、商用化となりえるサービスクオリティを受容可能なコストで実現させられるかどうかを見極める役割を担いました。

必要最低限の設備による省エネルギー、
商用サービスへの前進。

また柳さんは、一日あたり平均で約30%のエネルギー削減の成果に加え、実装の容易性についても注目、「データ収集の量は、多ければ多いほどAIの機械学習にとってはより精度の高い予測ができますが、商用サービス導入を念頭に置くと、たくさんの数のセンサー設置は難しいという現実があります。今回はひとつの空調制御エリアに対してひとつの温湿度センサーを設置するという設計にしました。

さらに、施設にとって空調管理というのはとても気を遣う分野のひとつですので、実験前はAI制御に対しての懸念の声もありましたが、稼働後はテナント入居者の方々や店舗の方々からのクレームもなく無事に完了できたことも私としては満足している点です。

今回の実証実験によって、一定の実用性が得られたと思います。他のビル内においても同様の省エネルギーの効果が得られるだろうということで商用サービス実現へ大きく前進することができました」と話します。

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実際のアーバンネット名古屋ネクスタビル内に設置された温湿度センサー。このようなセンサーがビル内数箇所に設置された。

快適性の指標に使われているPMV(Predicted Mean Vote:平均予想温冷感指数)は、温度、湿度、放射温度、風量、着衣量、運動量の6つの要素から算出されます。この値は、算出値が正の値で大きいほど暑く感じ、負の値で大きいほど寒く感じる数値であり、この数値が±0.5の範囲内に収まるとその環境は一般的に「快適」とされます。この指標は、温冷感指標として1994年に国際規格 (ISO7730)になり世界各国で活用されている指標です。

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PMV(Predicted Mean Vote:平均予想温冷感指数)の6つの要素と指数のグラフ。V字の折れ曲がる部分を0として±0.5の領域内の環境が快適と感じるところとされている。

「PMV指標による快適性の実現と言っても、ビルの構造によって空調の温度設定・吹き出し口の風量が影響を及ぼす程度が違うため、AI学習ではその精度を向上させるために、数値だけではなく空調制御エリアのフロアマップも読み込ませます」とのこと。

今後は、新たな人流センサーなど施設に過大な設備の拡充を推奨するのではなく、監視カメラなど既存のセンサー類のデータ利活用も検討し、現実的な商用サービス導入を進めていこうとしています。

エリア全体での活用へ。
社会課題解決への貢献。

NTTアーバンソリューションズ 街づくり推進本部 担当課長 宇田川陽介さんは「街づくり×デジタル」の施策の中で、今回の成果を受け、「大きなファーストステップがクリアできたと思います。引き続きAI空調制御最適化システムの導入を推進するとともに、今後は省エネルギー性能に加え、知的生産性の向上に寄与するパーソナルな快適性を実現し、専有部へも展開できるよう挑戦していきたいと思います」と話します。

宇田川さんは、NTTアーバンソリューションズで、デジタル時代に対応した新しくも永続性のある街づくりに日々取り組んでいます。今回の実証実験を分析した上で、より効果を発揮するフィールドを拡大し、幅広いステークホルダーのみなさまにご満足いただける仕組みづくりを推進しています。

「今回の実証実験を通して、人が気づかないところをAIによって気づかされたところも多くありました。例えば、施設内の温度変化度合いと快適性の関連について人間が検討しきれなかった部分もAIを用いることで補完しました。外部の気候変動などの環境変化に応じて人流や室内環境の変化を先読みし、湿度を考慮した温度設定を行うことで、快適性の向上とエネルギー消費の削減を両立することができました。どういう制御シナリオが人に影響を与えるのかといった新しく得られた気づきを今後も活用していきたいですね。また、今回はアーバンネット名古屋ネクスタビル単体での実験でしたが、ひとつのビルだけに限らないサービス導入もめざしていきたいですね」と、今回の手応えを話します。

天気予報データなど事前に入力するプログラムでは、近接した場所であれば同様のデータの流用によってシナリオ策定がしやすいというメリットがあります。

「そうしたメリットを活用することで、エリア全体での空調制御が実現すれば省エネルギーの恩恵が広がるだけでなく、社会課題となっている省人化などへの貢献もできるのではないかというのも次のステップで考えていきたいですね」

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NTTアーバンソリューションズ 街づくり推進本部 担当課長 宇田川陽介さん(画面左)
NTTコミュニケーションズ ビジネスソリューション本部 主査 柳長秀さん(画面右)

期待できる価値創出

省エネルギー、快適性の実現、省人化といった課題に対してAI空調制御最適化システムの有効性は、今回の成果によって大きく進んだことがわかります。それに加えて、石田さんは「快適性というのは、人の健康に与える影響がとても大きいと思います。冷え過ぎや温め過ぎはエネルギー効率の面だけでなく、直接、人の健康を害する要因にもなります。ビル内だけでなくエリア全体で空調制御を行うことで、寒暖差なども解決することができれば、健康増進という価値も加えられるのではないかと思います」と話します。

また、宇田川さんは、「人流データの活用は、AI空調制御最適化システムでの活用だけでなく、店舗にとっては来客者の混雑予想とも関連した重要な要素になります。エリア全体での快適性の実現は、一人ひとりの生産性の向上とともにエリアの活性化にもつながるのではないでしょうか。NTTアーバンソリューションズグループでは、実証実験を連鎖させることで、個々の分野にとどまらず、全体最適に向けた取り組みも進めていきたいと考えています」
と、今回の成果を振り返ります。これからの可能性と商用化導入への道筋が見えてきた今回のAI空調制御最適化システムですが、それだけにとどまらない多くの価値を創出する取り組みがはじまっているのです。

レポートのまとめ

  • 快適性を維持しつつ、
    1日あたり平均30%以上のエネルギーを削減したAI空調制御最適化システム。
  • 多様な建物での適用可能性、
    最小限センサーでの実装の容易性についても証明され商用導入へ。
  • 対象をビル共用部から専有部へ拡大、
    さらに、ビル単体からエリアへと拡大することで、
    省エネルギーを推進し、他サービスとも情報を連携することでエリア全体での価値拡大をめざす。